201409.16
不動産競売の買受け(入札)には、「期間入札」という方法が用いられます。しかし、このほかに「特別売却」という方法で売却される物件もあります。期間入札と特別売却はどのように違うのでしょうか。また、期間入札がどのように行われ、買受人がどのように決定されるのかといった競売手続きの流れについても簡単にまとめておきます。
期間入札とは入札の方法のひとつで、入札公示日から一定期間をおいて入札を行い、入札期間内に買受希望者からの入札を募るものを指します。これに対し、買受希望者が特定の日時に入札書を直接持参し、その場で入札を行う方法を「期日入札」といいます。
不動産競売においては期間入札方式が用いられ、買受希望者は公告後、通常2~3週間程度に設定される入札期間中に入札を行います。公告書には、目的不動産の登記上の表示等、入札期間、開札期日・開札場所、売却基準価額、買受可能価額、買受けの申出に際して提供する保証の額・提供方法など、不動産売却に関する必要事項が記載されています。買受希望者は公告書を見て興味を持った物件の「物件明細書」「現況調査報告書」「不動産評価書」(以下3点セット)を閲覧し、対象不動産を調査したうえで買受の申出(入札)を行います。入札に際しては入札書・添付書類の提出、および売却基準価額の2割の保証金の払込みが必要です。
入札期日が過ぎ、開札期日に裁判所内の売却場で開札が行われます。入札した人のうち最も高い価格を付けた人が「最高価買受申出人」と定められます。最高価買受申出人に目的不動産を売却するかどうかは、売却決定日に裁判所が決定します。売却が許可された場合(売却許可決定)、債権者、債務者及び所有者等の利害関係人から売却許可決定に対する不服申立ての執行抗告がなければ、売却許可決定が確定し、最高価買受申出人は買受人となります。また、同時に代金納付義務が発生します。
買受人が代金を納付すると、対象不動産は買受人の所有となり、裁判所は登記官に対して所有権移転登記の嘱託をします。なお、もし買受人が納付期限内に代金を支払わなかった場合は買受人の権利を喪失し、「次順位買受申出資格者」(2番目に高い価格をつけた人)が買受人となります。
特別売却とは、期間入札により売却を実施しても適法な買受けの申出がなかった場合に実施される売却方法です。各地方裁判所の管轄において、売却実施命令に基づき執行官が実施します。ただし、期間入札で売却できなかった物件は全て自動的に特別売却になるというわけではなく、売却基準価額を見直した上で再び期間入札に出されることもあります。
特別売却には
1.条件付特別売却……期間入札の売却実施処分と同時に、期間入札において適法な買受けの申出がないときに特別売却を実施するという「条件付特別売却実施処分」に基づく売却方法
2.上申による特別売却……条件付特別売却を実施しても買受けの申出がなかった場合で、差押債権者から特別売却の実施を要請する旨の上申書が提出され、裁判所書記官が相当と認めたときに実施するという「特別売却実施処分」に基づく売却方法
の2種類があります。いずれも、特別売却期間中に買受可能価額(売却基準価額の8割に相当)以上でもっとも早く買受けを申し出た人に買受けの権利が与えられます。早い者勝ちということです。複数の買受申出が同時に同額であったときには、それらの申出人で再入札を行い、より高い買受申出額を入札した方が買受申出人となります。
期間入札において適法な買受けの申出がなかった物件は、権利関係が複雑であったり、共有持分売りであったり、心理的瑕疵があったりと、あまり魅了のない売れ残り物件であることが多いので、特別売却によっても買受人が現れないケースがあります。そういう場合は期間入札2回目→特別売却2回目→期間入札3回目→特別売却3回目という流れになります。それでも売却できなかった場合には、裁判所は競売手続を停止することができます(民事執行法68条の3、188条)。
第68条の3
① 執行裁判所は、裁判所書記官が入札又は競り売りの方法による売却を三回実施させても買受けの申出がなかつた場合において、不動産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に売却を実施させても売却の見込みがないと認めるときは、強制競売の手続を停止することができる。この場合においては、差押債権者に対し、その旨を通知しなければならない。
② 差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から三月以内に、執行裁判所に対し、買受けの申出をしようとする者があることを理由として、売却を実施させるべき旨を申し出たときは、裁判所書記官は、第六十四条の定めるところにより売却を実施させなければならない。
③ 差押債権者が前項の期間内に同項の規定による売却実施の申出をしないときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消すことができる。同項の規定により裁判所書記官が売却を実施させた場合において買受けの申出がなかつたときも、同様とする。
管轄裁判所と
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