201511.06
無剰余による取消し制度について、簡単に整理してみました。
無剰余とは、執行裁判所が定めた買受可能価額が優先債権と手続費用(差押えの登録免許税や現況調査・評価の費用)の合計見込額を下回る場合をいいます。
民事執行法63条1項は、このように競売を実施しても差押債権者に配当される余剰がない場合には、配当が回って来ない債権者からの競売申立は無益な競売として認めていません(剰余主義)。
なぜこのような制度があるのかというと、無益な換価を防止するとともに、優先債権者の換価時期の選択権を保証する趣旨です。
ここでいう優先債権としては、差押債権者より先順位の抵当権、根抵当権、先取特権、不動産質権、仮登記担保権等の被担保債権および交付要求をした租税債権者の債権等が含まれます。
現況調査報告書および評価書が提出され、かつ、配当要求の終期が到来して優先債権の見込額が確定できる時期以降に行われます。
執行裁判所は、不動産の買受可能価額で手続費用および差押債権者に優先する債権を弁済して剰余を生ずる見込みがないと判断したときは、その旨を差押債権者に通知します(民執63条1項)。
通知書には、優先債権額等の見込額は記載されますが、優先債権者及びその債権の内訳等の具体的な記載はされませんので、これらを知りたい場合には、記録の閲覧をするなどして確認する必要があります。
差押債権者が「裁判所の定めた売却基準価額は低すぎる!せっかく競売を申立てたのだしこのまま売却実施にまでもっていけば自分に配当が回るくらいの額で落札されるはず」と思って競売手続の続行を望む場合には、無剰余通知を受け取ってから1週間以内に下記のいずれかの措置を講ずる必要があります。
①手続費用と優先債権の合計額以上の額で自ら買い受ける旨の申出をしてその申出に相当する保証を提供する方法〔民事執行法63条2項1号〕
②剰余を生じる見込みがあることを証明する方法〔民事執行法63条2項ただし書前段〕
③優先債権者の同意を得ていることを証明する方法〔民執63条2項ただし書後段〕
これらいずれかの措置がなされれば競売手続は続行し、物件明細書が作成され売却実施を命ずる処分が下されます。
なお、1週間以内にこれらの措置をとることができないときでも、その理由及び措置をとるまでに要する期間を記載した上申書が裁判所に提出されれば、その内容に応じ競売手続を取り消すまでの期間が伸長される場合もあります。
管轄裁判所と
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