201511.10
根抵当権の元本確定の登記には、対抗要件としての意味はなく、元本確定の事実を報告的に公示して確定後に限ってすることのできる登記の前提登記としての意味しか有しません。したがって、登記記録上、根抵当権の元本確定の事実が明らかな場合には、元本確定の登記を経ずして、元本確定の後でしかすることができない登記をすることができます。
登記記録上、根抵当権の元本確定が明らかな場合として、下記の5つのケースが挙げられます。
根抵当権の元本確定期日は任意的登記事項ではありますが、登記されていれば確定期日の到来は誰でも知ることができますから登記記録上、根抵当権の元本確定が明らかといって何の問題もありません。
蛇足ですが、民398条の6第3項は、確定期日は、設定契約の日から5年以内でなければならないと規定しています。
民398条の8第4項が、根抵当権者または根抵当権の債務者について相続の開始後6ヶ月以内に指定根抵当権者または指定債務者の合意の登記をしなければ、元本は相続開始の時に確定したものともみなされる、としているからです。
逆に言えば、相続開始から6ヶ月を経過しても合意の登記がなされていなければ、登記記録上、元本の確定が明らかといえるので、元本確定の登記を経ずして、元本確定の後でしかすることができない登記を自由にすることができるということになります。
なお、根抵当権の債務者が複数いる場合で、そのうちの1人について元本確定事由が生じても(相続の開始後6ヶ月以内に指定債務者の合意の登記がなされなくても)、根抵当権は確定しません。
民398条の20第1項①、いわゆる1号確定の場合です。
たとえば、根抵当権の一部譲渡を受けた者を債権者とする差押えの登記であっても登記記録上、根抵当権の元本確定が明白な場合に該当します。
なお、根抵当権に設定された転抵当の転抵当権者が競売申立てをして差押えの登記がなされても、転抵当権者は根抵当権者とは異なるため、根抵当権の元本確定が明らかな場合には該当しません。
民398条の20第1項②、いわゆる2号確定の場合です。
ちなみに、いわゆる3号確定(根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始等をしった時から2週間経過したことによって確定した場合)は、根抵当権者の主観的認識を確定事由としていることから、登記記録上元本が確定していることが明らかな場合には該当しません。
このケースでは、根抵当権設定者が個人か法人かで結論が異なります。
根抵当権設定者が法人であって破産手続開始の決定を受けた場合には、個人の場合同様に当該根抵当権の元本は法律上当然に確定しますが(民398条の20第1項④、いわゆる4号確定のうちの1つ)、個人の場合と異なり当該法人の所有する不動産に破産手続開始の登記がされることはないので登記記録上は元本が確定していることが明らかとはなりません。その結果、債権譲渡や代位弁済等を原因として当該根抵当権の移転登記を申請する場合には、当該申請の前提として元本確定の登記の申請が必要となります。
それでは、A物件とB物件が共同根抵当の関係にあり、A物件にのみ上記のような元本確定していることが登記記録上明らかな事由が発生しているようなケースにおいて、A.・B両物件につき元本確定後にしかできない登記を申請しようとするような場合には、その前提としてB物件については元本確定の登記を経ておく必要があるでしょうか?
この点、条文的には民398条の17第2項が、共同担保たる旨の登記がされている場合は、1個の物件について確定事由が生じたときは、すべての物件について元本は確定するとしているので、A物件に元本確定していることが登記記録上明らかな事由が発生すればB物件も自動的に元本は確定することは間違いありません。
しかしながら、B物件について登記記録上においても元本が確定していることが明らかかといえば、共同担保目録からは推察はできてもB物件の登記記録上からだけでは元本が確定していることが明らかとはならないので、A.・B両物件につき元本確定後にしかできない登記を申請しようとするには、結局のところB物件については元本確定の登記を経る必要があるという結論となります。
管轄裁判所と
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①納付済の保証金の返還が受けられません。
②入札した当該同一物件が再び期間入...